暗号資産(仮想通貨)取引所大手バイナンスのチャンポン・ジャオ創業者は2日、MEV(Maximal Extractable Value)攻撃と悪意あるリクイデーション(強制決済)に対処するため、ダークプール(注文情報が非公開の取引の場)型の永続契約分散型取引所(DEX)の開発を提案した

MEV攻撃は、分散型金融(DeFi)プラットフォームでボット(自動取引プログラム)がフロントランニング(先回り取引)やサンドウィッチ攻撃(取引を前後から挟み込む攻撃)、裁定取引(価格差を利用して利益を得る取引)を通じて利益を得る手法を指す。

ジャオ氏は、DEXにおけるリアルタイムでの注文の可視性が、ボットによる価格操作やトレーダーを標的とした不利な取引を可能にしていると指摘している。

MEV攻撃の現状と課題

現在のDEXでは、売買注文が公開されているため、ボットが取引を妨害したり価格を操作したりする脆弱性が存在する。

具体的には、サンドウィッチ攻撃ではボットがユーザーの取引を挟み込んでスリッページ(注文価格と約定価格の差)から利益を得る。

また、裁定取引ではDEX間の価格差を悪用し、オラクル(現実世界の情報をチェーン上に伝える仕組み)ベースのリクイデーションでは市場の変動時にローンを標的とする攻撃が行われている。

これらの攻撃により、一般のトレーダーはスリッページやフロントランニングによる損失に直面し、流動性提供者は裁定取引による再バランシング(自動的資産構成の調整)で、非永続的損失(保有資産の価値が当初より目減りする可能性のある損失)が増加している。

バリデーター(検証者)もMEV報酬を獲得する一方で、DeFiエコシステムに価値を還元していない状況が続いている。

このような攻撃は特定の管理者を持たないDEX特有の問題として議論されることが多いが、中央集権型の仮想通貨取引所においてもユーザー保護の観点から類似の課題が存在しうる。

プライバシー強化によるソリューション

ジャオ氏の提案するソリューションは、ゼロ知識証明(情報自体を明かさず、情報の正当性を証明する技術)や暗号化などのプライバシー保護技術を活用し、オーダーブック(売買注文の一覧)を隠匿したり、スマートコントラクト(自動契約承認機能)のやり取りの可視性を遅延させたりする仕組みだ。

この手法は、オーダーブックとは別の、非公開の環境で取引が行われる従来の金融市場の仕組みである「ダークプール」を参考にしている。

現在のMEV対策としては、MEV-BoostやFlashbotsなどのプライベートリレー(特定経路の処理)やクリアされた取引があるが、これらはオーダーブックやスマートコントラクトのやり取りの可視性には対処していない。

ジャオ氏の提案は、透明性とプライバシーの制約をバランスよく組み合わせ、搾取を防ぐことを目指している。

この提案は、DeFiにおける取引のプライバシーのあり方を新たに見直そうとする、より大きな潮流の一部と捉えられている。

MEV攻撃が市場の効率性や参加者間の公平性を損なっている現状において、取引の追跡や検証の可能性(監査可能性)を確保しつつ、ユーザーのプライバシーを強化しようとする先進的な試みと言える。

提案されているダークプール型のDEXでは、ビットコインやイーサリアムだけでなく、様々なアルトコインの取引におけるプライバシー保護も期待される。

ポイント

  • ジャオ氏がMEV攻撃対策としてダークプール型DEXの開発を提案
  • プライバシー保護技術でオーダーブックの可視性を制限
  • 従来のDEXの透明性とプライバシーのバランスを取る新たなアプローチ

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永島 大和
永島 大和
仮想通貨ライター

日本版99Bitcoinsライター。2019年から仮想通貨投資を開始。仮想通貨ブ... 続きを読む

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