欧州中央銀行(ECB)のピエロ・チポローネ専務理事は4日、開発中のデジタルユーロについて、日本人を含む海外からの旅行者も利用可能になるとの見通しを明らかにした。
旅行者も利用可能な「デジタル版現金」
チポローネ氏は日経新聞とのインタビューに応じ、デジタルユーロの設計方針について詳細を語った。欧州を訪れる観光客も、現地の決済サービスを通じてデジタルユーロを利用できるようになるという。
この取り組みは、欧州全域でどこでも使える「デジタル版現金」を提供することを目的としている。背景には、現金利用の減少と、VisaやPayPalなど米国の決済企業への過度な依存に対する懸念がある。
ECBは決済システムの自律性を高め、欧州外の影響を受けにくい強靭なインフラ構築を目指している。これにより、P2P送金やeコマース、店舗での支払いがよりスムーズになると期待されている。中央銀行が発行するデジタル通貨として、CBDCとは何かという問いへの一つの答えを提示するものだ。
ステーブルコインへの対抗と導入計画
デジタルユーロ開発のもう一つの重要な要因は、米ドルに裏付けられたステーブルコインの普及阻止だ。チポローネ氏は、これらが日常的な決済の標準になることへの懸念を示している。
同氏は、裏付け資産に依存するステーブルコインは柔軟性に欠け、金融安定上のリスクになり得ると指摘した。デジタルユーロの導入により、店舗側は高額な国際カード手数料を削減できるメリットもある。
実施スケジュールについては、2026年の法整備採択を経て、2029年中の発行開始が想定されている。現在、ECBは日本銀行など他国の中央銀行とも技術共有を進めている。
プライバシー保護と保有上限の設定
システム設計では、個人のプライバシー保護と金融システムの安定性が重視されている。ユーロ圏の財務相は、個人の保有上限を3,000ユーロ(約49万円)とする枠組みに合意した。
この上限設定は、銀行預金からの急激な資金流出を防ぎ、金融の安定を確保することが目的だ。セキュリティ面では、サイバー攻撃への耐性を高めるため、3拠点で並行して稼働するシステムを構築する。
また、オフライン決済機能により、通信障害時や電波の届きにくい地域でも現金のように利用できる。店舗取引時には、現金と同様の匿名性とプライバシーが確保される見込みだ。既存の民間発行の仮想通貨とは異なり、公的な信頼性を担保する形での普及が見込まれている。
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