中国人民銀行(中央銀行)は1日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタル人民元」に利子を付与する制度を開始した。

商業銀行が保有残高に対して利子を支払う仕組みで、通常の預金と同様の扱いとなる。企業による国境を越えた決済での利用を促し、ドルに依存しない決済網を拡大する狙いがある。

デジタル預金通貨への移行

人民銀行は2025年末、デジタル人民元の管理体制を刷新すると発表していた。これにより、デジタル人民元は単なる「法定デジタル通貨」から「デジタル預金通貨」へと位置づけが変わった。

人民銀行の陸磊副総裁によると、商業銀行のウォレットにあるデジタル人民元は銀行の預金負債として分類される。残高は中国の預金保険制度によって完全に保護されることになる。

大手国有銀行は、通常の普通預金と同等の金利を支払うことになり、その利率はおよそ0.05%となる見込みだ。この変更は、2019年の試験運用開始以来、最も根本的な枠組みの転換となる。

2025年11月時点で、中国は累計34億8000万件、金額にして16兆7000億元(約365兆円)の取引を処理した。今回の変更により、銀行はデジタル人民元をより柔軟に運用できるようになる。

普及の課題と国際的な競争

今回の方針転換の背景には、国内決済市場での苦戦がある。ウィーチャットペイやアリペイといった既存の決済アプリが圧倒的なシェアを占めており、普及が思うように進んでいない。

ウィーチャットペイは2024年だけで15兆4000億ドル(約2371兆円)の取引を処理した。これに対し、政府主導のデジタル人民元の利用は限定的であり、テコ入れが必要とされていた。

一方で、世界的にはステーブルコインの取引が急増している。2025年の取引額は7月までに4兆ドル(約616兆円)を超え、前年比83%増を記録した。

中国の動きは、CBDCを禁止した米国とは対照的だ。トランプ米大統領は2025年1月、金融の安定性などを理由にCBDCの発行や利用を禁止する大統領令に署名している。

中国は上海に国際運用センターを開設し、シンガポールやサウジアラビアなどとの実証実験を進めている。

利子付与により、国際貿易における人民元の存在感を高めることができるか注目される。こうした国家主導のデジタル通貨の動向は、民間の仮想通貨市場にも影響を与えそうだ。

ポイント

  • 中国人民銀行がデジタル人民元に利子を付与する新制度を開始し、預金と同様の扱いとした
  • 国内での普及停滞やステーブルコインの台頭を受け、国際的な利用拡大を目指す戦略的転換である
  • CBDCを禁止した米国とは対照的な動きであり、ドルに依存しない決済網の構築を狙っている

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由利 匠
由利 匠
暗号資産ジャーナリスト

日本語版99Bitcoinsニュースライター。5年ほど仮想通貨メディアでニュース... 続きを読む

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