大手会計事務所のPwC(プライスウォーターハウスクーパーズ)は5日、暗号資産(仮想通貨)に関連する業務を大幅に拡大する方針を明らかにした。
PwC米国のポール・グリッグス・シニアパートナー兼CEOは、2025年7月に成立した「GENIUS法」と、米国の規制当局による仮想通貨への前向きな姿勢の変化が、今回の戦略的拡大の主な要因であると述べた。
同社はこれまで仮想通貨市場に対して慎重な姿勢を維持してきたが、法整備が進んだことで大きな転換期を迎えている。
同社はすでにグローバル規模で仮想通貨サービスチームを増強しており、ブロックチェーンや暗号資産の専門家を相次いで採用している。
その具体的な成果として、ナスダックに上場するビットコイン(BTC)マイニング大手、MARAホールディングスの2025年度会計監査を受託した。
これは、同社が仮想通貨の監査業務に本格的に再参入したことを象徴する動きといえる。
規制の明確化が機関投資家の参入を後押し
PwCが戦略を転換した背景には、米国市場における規制の透明性が向上したことがある。特にGENIUS法の成立は、デジタル資産の運用に関する明確な枠組みを確立し、専門サービスを提供する上でのリスクを大幅に軽減させた。
また、証券取引委員会(SEC)や商品先物取引委員会(CFTC)などの主要規制機関の指導部交代も、予測可能な事業環境の構築に寄与している。
これに加え、仮想通貨ETFの普及も、市場の透明性を高める重要な要素となっている。
さらに、ステーブルコインに関する法整備が進展したことで、決済やカストディ(保管)業務、ブロックチェーン基盤に対する機関投資家の信頼が高まった。
PwC自身も、自社の支払い効率を向上させるためにステーブルコインの活用を検討している。トランプ政権による仮想通貨推進の政策方針も、同社がサービスを拡大する上での強力な後押しとなった。
現実資産(RWA)のトークン化も、同社の戦略に大きな影響を与えている。
主要な米国証券をブロックチェーン上でトークン化する動きが承認されたことで、デジタル資産は投機的な対象から、専門的なサービスを必要とする正当な金融商品へと変化した。
これにより、会計事務所が果たすべき役割が急速に拡大している。
ビッグ4各社が競うデジタル資産市場の未来
PwCは仮想通貨事業の拡大を支えるため、独自のブロックチェーン分析ツールを開発し、取引のレビューやリスク監視能力を強化している。
同社は、伝統的な金融機関がデジタル資産分野へ参入する際の支援だけでなく、仮想通貨ネイティブな企業に対しても、サイバーセキュリティやウォレットの監視、規制アドバイザリーなどの包括的なサービスを提供していく方針だ。
特に、市場への影響力が大きいビットコイン(BTC)に関連する監査需要は、今後も増加の一途をたどると見られる。
この動きは会計業界全体の潮流でもあり、いわゆる「ビッグ4」と呼ばれる大手事務所はいずれも仮想通貨関連サービスを競って強化している。
デロイトは企業財務におけるブロックチェーン活用に注力し、EYはコンプライアンスとカストディに焦点を当てている。また、KPMGはデジタル資産が「ティッピングポイント(転換点)」に達したと宣言した。
PwCは今後、世界のトークン化市場が飛躍的に成長すると予測している。伝統的な資産がデジタル化されるにつれ、専門的な監査やコンサルティングの需要はさらに高まる見通しだ。
デジタル資産が金融システムの核心的な要素として扱われる時代に向け、同社はインフラ整備とガバナンスの確立を急いでいる。
ポイント
- PwCは米国の規制緩和を受け、暗号資産関連の監査やコンサルティング業務を大幅に拡大した。
- 2025年7月のGENIUS法成立が転換点となり、ビットコイン採掘大手MARAの監査も受託した。
- ステーブルコインや資産のトークン化需要を見込み、専門チームの増員と技術開発を進めている。
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