リサーチ企業Prestoのリサーチ責任者であるピーター・チャン氏は19日、公開企業が暗号資産(仮想通貨)の財務運用を導入する動きが、新たな金融工学の時代の幕開けだと指摘した

上場企業が公開資本市場を通じて仮想通貨を蓄積する新たな金融モデルを採用する動きが活発化していることが分かった。この潮流は企業価値を押し上げる一方、バブルへの懸念も生んでいる。

Prestoによると、この動きに伴う清算や破綻のリスクは実在するものの、TerraやThree Arrows Capital(3AC)が引き起こした過去の危機とは異なり、より複雑な様相を呈しているという。

新たな金融工学の夜明けか

チャン氏は木曜日のレポートで、これを1980年代のレバレッジド・バイアウトや1990年代の上場投資信託に匹敵する動きだと評価した。

このモデルは、ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社の戦略に触発され、特に米国の厚い資本市場と洗練された機関投資家を背景に支持を広げている。

これらの企業は、株主価値を最大化するためにビットコイン(BTC)などの仮想通貨を購入するための資金を調達している。

チャン氏の説明によると、これらの企業は元々の事業会社や特別買収目的会社、ペーパーカンパニーなどを仮想通貨蓄積のための媒体として再利用するケースが多い。

資金調達方法は、企業の成長段階や投資家層に合わせて選択され、資産を担保に入れることなく市場の変動性を効率的に活用することを目指している。

チャン氏は、一部の仮想通貨財務企業は長期保有の姿勢を貫けないかもしれないが、それが市場のリスクを高めることには直結しないと述べた。

リスク管理は各社の資金需要の予測と、仮想通貨保有を維持・成長させるための資本構成能力にかかっているとした。

懸念されるリスクと過去の危機との違い

仮想通貨財務企業の急速な台頭は、市場が弱気相場に転じた場合に、レバレッジをかけたポジションが強制的な清算の新たな波を引き起こすのではないかとの懸念を呼んでいる。

チャン氏は主なリスクとして、以下の2点を挙げた。

  • 担保清算リスク
  • アクティビスト(物言う株主)主導の清算リスク

しかし同氏は、これらのリスクはTerraエコシステムや3ACといった過去の危機を引き起こした要因よりも限定的だと主張する。担保の面では、ほとんどの企業が仮想通貨をローンの裏付けとして使用することを避けているという。

こうした動きは、企業が仮想通貨を新たな資産クラスとして認識し始めている証拠でもある。

Prestoの調査によると、主要12社が調達または調達予定の440億ドル(約6兆4240億円)のうち、負債による資金調達は3分の1に過ぎず、その87%は無担保だ。この規律が維持される限り、マージンコールによる連鎖的な清算リスクは低いとみられる。

もう一つの懸念であるアクティビストによるリスクについても、実際には資産売却の強制といった強硬手段は最後の手段であり、自社株買いなどの穏健な戦術が好まれる傾向にあるとチャン氏は説明した。

加速する企業の仮想通貨蓄積競争

現在、ビットコインだけで228社が何らかの形で仮想通貨財務戦略を採用している。最近ではメタプラネットやセムラー・サイエンティフィックなどに加え、テザーが支援するTwenty Oneやトランプ・メディアなどもこのモデルを取り入れた。

一方で、デジタル資産銀行Sygnumのアナリストは先週、企業によるビットコイン保有の増加が、中央銀行の準備資産としてのビットコインの適性を損ない、安全資産としての性質を弱めるリスクがあると指摘した。

Coinbase Institutionalの調査責任者も、レバレッジをかけた企業の購入が最終的にシステミックリスクをもたらす可能性を警告している。

この動きを牽引してきたストラテジーの共同創業者マイケル・セイラー氏は、自社の資本構成に自信を見せる。同氏は、株式や転換社債などを組み合わせることで、ビットコイン価格が90%下落しても4〜5年間は耐えられるように設計されていると語った。

この企業による仮想通貨蓄積の動きは、今後さらに他の資産へも広がる可能性がある。

チャン氏は、ステーキング報酬が得られるプルーフ・オブ・ステーク(PoS)トークンが、アルトコインに特化する企業にとって特に魅力的になるかもしれないと指摘する。

同氏は、このトレンドはまだ初期段階としながらも、個々の企業の資金繰り計画能力こそが、最大のリスク管理の鍵になると結論付けた。

ポイント

  • 上場企業が公開市場で資金調達し、ビ仮想通貨を大量に購入する仮想通貨財務企業が増加している。
  • 担保に頼らない資金調達が主流なため、過去の危機とは異なり連鎖的な清算リスクは限定的と分析。
  • 一部の専門家はシステミックリスクを懸念するが、市場全体の新たな脅威ではないとの見方もある。

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Shogo Takanashi
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仮想通貨ライター

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