ポイント
JPYC株式会社は3日、日本初となる円連動型ステーブルコインを今夏にも発行する方針を明らかにした。
発行開始から100億円規模の流通量を見込み、段階的に1000億円、1兆円規模への拡大を目指すという。
同社は現在、資金移動業のライセンス取得に向けたドラフト審査の最終段階にあり、決算期である7月末までの発行開始を目指している。米サークル社のUSDTの仕様に準拠した規格を採用する予定だ。
グローバルで拡大するステーブルコイン市場
世界のステーブルコイン市場は時価総額35兆円を突破し、月間取引量は500兆円規模に達している。これは東京証券取引所の株式取引全体の10倍に相当する規模だ。
市場をリードするのはテザー社発行の「USDT」(時価総額約22兆円)とサークル社の「USDC」(同約6.5兆円)。特にアフリカや南米、東南アジアなどの新興国では、銀行サービスが十分に行き届かない地域での新たな決済手段として定着しつつある。
日本では2022年に資金決済法を改正し、ステーブルコインを「電子決済手段」として法制化。発行主体を銀行、資金移動業者、信託会社に限定し、仲介業者には「電子決済手段等取引業」としての登録を義務付けた。
SBI VCトレードは2025年第1四半期にUSDCの取り扱いを開始する予定であり、円連動型ステーブルコインの発行をいち早く目指すJPYC社は、USDCを発行するサークル社から世界で初めて出資を受けている。
JPYCの収益モデルとマネロン対策
JPYC社の収益モデルは大きく2つの柱を想定している。1つは資金移動業として裏付け資産を運用する収益だ。「1兆円分を発行して、国債の平均金利が1%になれば、100億円の粗利が見込める」と岡部典孝代表取締役は試算する。
もう1つの柱は両替手数料で、USDCと日本円の両替で0.5%程度の手数料収入を見込む。「1兆円相当、USDCと日本円を両替したとしたら片道50億円入る」という。なお、決済手数料は完全無料化する方針だ。
JPYC社はすでに発行済みのJPYCプリペイドと新JPYCの並行運用も予定している。プリペイドは規制が緩やかな反面、日本円への払い戻しが制限される。一方、新JPYCはKYCなしで利用することはできず、本人確認が必要になるものの、銀行預金に近い性質を持ち、円への交換が可能となる。
ステーブルコインの普及に向けては、マネーロンダリング対策が重要な課題となっている。JPYC社は日立製作所など13社連携で、不正送金の検知や取引停止に向けた実証実験を開始している。
新たな決済インフラを目指す
JPYC社が目指すのは、従来の金融インフラを超えた新しい決済の形だ。「これまで企業ができなかった取引や決済の形を実現する。例えば、ほとんどの企業は今、海外への送金を自動化することができない」と岡部氏は説明する。
日本円建てのステーブルコインには、独自の価値提案がある。日本の企業や投資家にとって、税金の支払いや会計処理は日本円建てで行う必要がある。また、円がドルに比べて金利が安いことから、「JPYCで調達して、世界中で投資するといった使い方は外国の方もできる」と岡部氏は指摘する。
JPYC社は将来的なIPOも視野に入れており、Web3系の企業が日本で上場した例はこれまでになく、「段階的な成長を目指している」と岡部氏は語る。
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